こんにちは、公認会計士のロディです。

公認会計士試験(論文)に合格しても、公認会計士として「登録」するためには、「実務経験」も必要になります。

公認会計士試験に合格した者であって、業務補助等の期間が2年以上であり、かつ、実務補習を修了し内閣総理大臣の確認を受けた者は、公認会計士となる資格を有する。

(参照:公認会計士法 第三条)

なんだか、難しい表現で分かりづらいですよね。

本記事では、次のような方向けに「実務要件」について詳細解説します。

 想定読者

  • 「実務経験」って、そもそも何?? という方
  • いつ頃、「実務経験」を積めばよいの?? という方

 

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公認会計士登録に必要な、実務経験とは?

※ ちょっとだけ難しい話になります。

一般的に「実務経験」と表現していますが、正確(法律的)には「業務補助等」と言います。

では、何を「業務補助等」とするのか?というと、公認会計士法上は次のように定義しています。

公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。(公認会計士法 第2条1項)

ちなみに、会計士用語で「1項業務」と呼んだりもします。

 

ロディ
ロディ
公認会計士法の表現は難解ですね。
かんたんに言ってしまうと、「会計監査に携わること」です。

 

会計監査とは、「決算書」が正しく作成されているかチェックする仕事です。

また、業務補助の「」に該当する実務経験として、公認会計士法施行令の第2条では次のように定義されています。

  • 法人の会計に関する検査若しくは監査、又は国税に関する調査若しくは検査の事務を直接担当すること。
  • 法人等において、貸付け、債務の保証その他これらに準ずる資金の運用に関する事務を直接担当すること。
  • 法人において、原価計算その他の財務分析に関する事務を直接担当すること。

※ 見やすくするため、やや要約しています。

 

金融庁のWebページでは、まとめて「実務従事」と呼んでいます。

表現が複雑なので、更に噛み砕くと、次のような経験になります。

  • 税務調査
  • 資金の貸し付けや運用業務に携わる
  • 一般企業(またはコンサルティング会社)で原価計算、財務分析を行う

業務の簡単な内容は、以上です。

 

ロディ
ロディ
こちらも簡単にまとめると、「税務調査」「金融」「経理」などで働くことをいいます。

 

それでは、具体的にどのような「職種」や「仕事内容」が、実務経験として認められるのか、細かく見ていきましょう。

 

会計士登録に必要な、実務経験の例

上記のとおり、実務経験として認められる業務には「業務補助」と「実務従事」があります。

これらに該当する代表的な業種・職業は、次のとおりです。

 実務要件を満たせる業種・職業の代表例

  • 監査法人
  • 会計事務所
  • 一般企業の「経理部」
  • 銀行・保険会社
  • 税務署職員

これらは代表的な例でして、これ以外にも「実務経験」を満たせるケースはあります。

また、上記の業種に所属したとしても、しっかりと「業務」に従事しなければ「要件を満たした」ことにはなりません。

では、それぞれどのような業務が「実務経験」に該当するのか、確認していきましょう。

 

① 監査法人

公認会計士が登録する際に使う、最もオーソドックスな実務経験です。

上述した「会計監査」に該当する実務経験になります。

公認会計士試験合格後、監査法人に入社するのが一般的でして、そこで普通に仕事をしていれば自然に「実務要件」をクリアできます。

念のため補足しておくと、「1年間に2社以上を監査する」という縛りがあります。

 

大規模なクライアントの監査チームに配属された場合、1年間を通じてそのほとんどを同1社のみに監査従事する事があります。

ただしそのような場合も、できる限り関連子会社を一時的に監査させる等、監査法人側で配慮してもらえます。(監査法人としても、公認会計士登録してもらわないと困るので。)

 

そのため、監査法人に入社した場合は、まず間違いなく「実務経験」として認められます。

なお、「そもそも監査法人に就職できるか不安…」という方は、「公認会計士の就職事情|受かっても無職?心配は要りません。」の記事をご覧ください。

30代前半までであれば、職歴がなくても就職ができますよ。ご安心を。

② 会計事務所

会計事務所は、やや微妙なラインです。

一般的な会計事務所でクリアできる(可能性のある)実務経験としては、次の2つの業務があります。

  • 会計監査
  • 原価計算または財務分析

小規模な会計事務所や、所長が税理士の場合、そもそも「会計監査」というサービスを提供していない可能性があります。

また、「原価計算または財務分析」をコンサルティングとしてサービス提供している可能性はありますが、1つ注意が必要です。

原価計算または財務分析(その他の「実務従事」も同様)の場合、計算や分析の対象とする法人が「資本金5億円以上」でなければなりません。

職員が4~5名のような小さな会計事務所の場合、そのような大規模クライアントへサービス提供していない可能性もあります。

そのため、就職する際には必ず「実務経験を満たすかどうか」を確認しましょう。

 

③ 一般企業の経理部

監査法人に次いでオーソドックスな就職先が、一般企業の経理部です。

経理部員としてクリアできる(可能性のある)実務経験は、次のとおりです。

  • 原価計算または財務分析

会計事務所の場合とは異なり、「自社の原価計算または財務分析」を行うことで、実務要件を満たす可能性があります。

ただし、確実ではありません。

理由は会計事務所の場合と同様でして、計算または分析の対象となる法人(この場合は自社)が資本金5億円以上でなければ、実務要件を満たさないためです。

そのため、中小企業に入社すると実務経験として認められない可能性があります。

こちらも、入社前に確認するのがベストです。

余談ですが、経理として公認会計士を採用するような企業の場合、「公認会計士登録ができるかどうか」を知っている可能性が高いので、面接時に確認できるケースが多いです。

 

④ 銀行・保険会社

銀行や保険会社から会計士に転職される方や、公認会計士試験に合格して銀行・保険会社に就職される方もおられます。

銀行・保険会社でクリアできる(可能性のある)実務経験は、次のとおりです。

  • 資金の貸し付けや運用業務に携わる

ただし、配属部署等によっては携わらない可能性もあるでしょう。

 

⑤ 税務署職員

レアケースですが、税務署の職員の方も、実務経験として認められる可能性があります。

  • 国税に関する調査若しくは検査の事務を直接担当する

基本的には実務経験として認められるはずですが、こちらも就職前に確認しておくのがベストです。

 

いずれの場合も、「2年間」の実務経験が必要

公認会計士登録に必要な実務経験と、その職種・業務内容は上記のとおりです。

上記の経験を、2年間実施する必要があります。

 

しかし、「何をもって2年間? 何日働けば良いの?」という疑問もあるかと思います。

この点、金融庁からのQ&Aによると、「一律の基準は無い」とのことです。

 

ロディ
ロディ
特に、会計監査の場合は「週に何時間とかではなく、法人の代表が2年間働いたと認めれば、それでいいよ」という趣旨のアンサーが出ています。(かなり適当ですね…。)

 

一方、実務従事(経理やコンサル)の場合は、他の常勤社員と比較して考慮するとの事です。

常勤が週40時間働いていたのに、申請者は週20時間しか働いていなかったら、半分の期間しか認めないよという事です。

パート社員の場合には、たとえ2年間働いていたとしても、時間が少ないという理由で期間を縮小される可能性もある、という事を覚えておきましょう。

 

【疑問】公認会計士試験に合格する前に、「実務経験」を積むことは可能?

たとえば、銀行員を辞め、公認会計士試験にチャレンジ→合格する方がおられます。

その場合、銀行員時代の「実務経験」は、公認会計士登録のための「実務経験」として認められます。

A1実務経験(業務補助等)には、以下の「業務補助」と「実務従事」があり、公認会計士の登録をするためには、2年以上の実務経験(業務補助等)が必要です(業務補助と実務従事の両方を経験している場合は、両方の期間を通算することが可能。)。

なお、実務経験の時期は、試験合格の前後を問いません。

引用:金融庁Webページ

というわけで、①実務経験を満たしてから、②公認会計士試験を受験し、③すぐに登録する、ということも可能です。

 

 

実務経験を満たしているのに、登録できない可能性は…?

公認会計士登録する際、「実務経験を満たしましたよ」と証明するには、「業務補助等証明書」というものを作成し提出する必要があります。

業務補助等証明書には、所属している法人の代表のサインが必要になります。

つまり、仮に実務要件を満たしていたとしても、代表からサインを貰えなければ認められません。
公認会計士に理解のない法人や、代表とそりが合わなかったりすると、会計士登録ができないというリスクがある…という事を覚えておきましょう。

大手監査法人ではまずそのような事はありませんが、僕の知人の公認会計士で「中小監査法人時代、「業務補助等証明書」へのサインを断られた」という人がいました。

サインをもらう際は、ある程度自分で制度について調べておき、上手く説明できるようにしておくと万全ですね。(繰り返しですが、大手監査法人では心配無用です。)

 

まとめ:情報収集は大切です。

まとめです。

 公認会計士登録に必要な、代表的な「実務経験」

  • 監査法人
  • 会計事務所
  • 一般企業の経理部
  • 銀行・保険会社
  • 税務署職員

ただし、(監査法人を除き)実務経験を満たせるかどうかは確実ではありませんので、予め会社に確認する、または金融庁Q&Aを確認するようにしましょう。

 

このほか、試験制度について情報を集めたい方は、予備校のパンフレットを入手されると良いですよ。

試験制度について、図や表などで分かりやすく解説されており、情報を網羅的に得られるため効率が良いです。
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今なら「合格体験記」と「無料講義」が付いてくるので、一石二鳥ですね。