こんにちは、公認会計士・税理士のロディです。
2021年に会計事務所を開業しました。
- 公認会計士と税理士の仕事内容って、どう違うの?
- 公認会計士か税理士を目指したいけど、どっちがオススメかな?
本記事では、そんな疑問にお答えします。
両方の資格を取得している筆者にしか書けない、リアルな情報を多く書かせていただきました。
[ 目次 ]
1.公認会計士になるには?税理士になるには?
① 公認会計士になるための流れ
② 税理士になるための流れ
③ 違いは「就職後も試験があるかどうか」
2.公認会計士と税理士の、「仕事内容」の違い
① 扱う分野・フィールドの違い
② クライアントとの「距離」の違い
③ 独立後の働き方の違い
3.公認会計士と税理士の、「年収」の違い
4.公認会計士と税理士の、「受験資格」の違い
① 公認会計士には「受験資格」が設定されていない
② 税理士の受験資格
5.公認会計士と税理士の、「勉強内容」の違い
① 試験科目は?
② 合格率は?
③ 勉強時間は?
④ 独学での合格は可能?
6.まとめ
公認会計士になるには?税理士になるには?
公認会計士、税理士、それぞれになるためのステップは少し異なります。
公認会計士になるための流れ
公認会計士になるには、次のステップを踏みます。
公認会計士になるための流れ
② 論文式試験に合格
③ 監査実務に「2年間」従事する
④ 補習所に「3年間」通う
⑤ 修了考査に合格する
ポイントは、「論文式試験に合格すると、仕事を始めることができる」という点です。
「公認会計士」として登録し、名刺に資格を書けるようになるには、⑤の修了考査に合格する必要があります。
しかし、実際は論文式試験の合格後から「公認会計士」とほぼ同様の仕事をすることになりますので、この時点で(名刺には書けないものの)公認会計士と呼ばれるようになります。
勉強スタートから論文式試験の合格までには、平均2~3年かかります。
また、③監査実務の経験と、④補習所への通学は、時系列としては同時に進行します。(つまり、働きながら補習所に通います。)
そのため、就職後から修了考査に合格するまでには、通常3年かかります。
よって、勉強スタートから「公認会計士」として名刺に書けるようになるには、合計で5~6年かかります。
なお、詳細な流れについては、次の記事で細かく解説しました。
税理士になるための流れ
税理士になるには、次のステップを踏みます。
税理士になるための流れ
② 税務実務に「2年間」従事する
税理士試験に合格するためには、平均で3~5年が必要になります。
よって、税理士の勉強をスタートしてから、「税理士」として名刺に書けるようになるには、平均で5~7年ほどかかります。
違いは「就職後も試験があるかどうか」
公認会計士、税理士になるための流れの「違い」は、「就職後も試験があるかどうか」です。
税理士の場合は、試験に合格した後、「2年間」仕事をすれば登録ができます。
しかし公認会計士の場合は、試験に合格した後、仕事をしながら「3年間」補習所に通い、修了考査に合格する必要があります。
「補習所」って何?

3年間で所定の単位を取得する必要があり、通学のほかeラーニングでも授業を受けることが可能です。
基本的には出席しているだけで単位が貰え、途中に何度かある「考査」という小テストのようなものもパスする必要があります。(難易度は非常に簡単です。)
そのほか、公認会計士の横のつながりが形成できますので、かなり有益な場です。
「修了考査」って何?

「公認会計士試験」というと、通常は「短答式試験」「論文式試験」の2つを指します。
「修了考査」も一応試験ではありますが、難易度が非常に易しいため、あまり重要視されません。
勉強期間は2~4週間程度でして、職場から「試験休み」も貰えますので、ふつうに勉強をしていれば誰でも合格できます。
「授業を受けるのが面倒…」と感じる時も確かにありましたが、「辛さ」とかはさほど感じませんでした。
そのため、公認会計士、税理士になるための「流れ」としては、さほど大きな違いはないと感じています。
公認会計士と税理士の、「仕事内容」の違い
次に、公認会計士と税理士の「仕事内容」の違いです。
公認会計士と税理士は、そもそも異なる資格ですから、「専門とする分野やフィールド」が異なります。
また、両者はやや「立場」が異なるため、「クライアントとの距離感」も変わります。
そして、独立後の働き方も異なります。
扱う分野・フィールドの違い
公認会計士と税理士の仕事内容、扱う分野、そしてお客さん(クライアント)は、次のとおりです。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
主な仕事内容 | 会計監査 | 税務相談、税務申告 |
扱う分野 | 会計 | 税務 |
主なクライアント | 大企業 | 大企業、中小企業、個人 |
公認会計士の仕事は、企業の「決算書」(成績表)が正しいかどうか、チェックする仕事です。(これを、会計監査といいます。)
大企業は「決算書」を公認会計士にチェックしてもらう義務がありますので、公認会計士のメイン顧客は、「大企業」になります。
一方、税理士の仕事は、「企業」や「個人」の税金計算です。
企業なら、法人税・事業税、個人なら所得税など、会社の規模に関わらず、国民全員が「税金」に関わります。
そのため、税理士のクライアントは、すべての会社・個人になります。

また「会計」と「税務」という領域は、似ている部分もありますが、分野としては大きく異なります。
こちらは、「勉強内容」の章で詳しくご説明します。
独占業務とは?
公認会計士と税理士には、それぞれ「独占業務」と呼ばれる業務があります。
独占業務とは、文字通り「独占している業務」であり、「公認会計士でなければできない業務」「税理士でなければできない業務」をいいます。
上記でも軽く触れましたが、それぞれの独占業務は次のとおりです。
独占業務
- 公認会計士の独占業務:会計監査
- 税理士の独占業務:税務相談、確定申告の代行
このような独占業務があるため、公認会計士や税理士は安定して仕事を得ることができます。
クライアントとの「距離」の違い
公認会計士と税理士の仕事内容は上述のとおりですが、僕が仕事をしていて最も感じるのが、クライアントとの距離の違いです。
- 公認会計士:クライアントを監査する
- 税理士 :クライアントの税務資料を作る、相談を受ける
公認会計士の「監査」という仕事は、クライアントを「監視」「調査」する仕事です。
一方で税理士の「税務相談」「税務申告」という仕事は、クライアントに「教える」「手助けする」仕事です。
つまり、公認会計士はクライアントからやや離れた位置におり、(悪い言い方をすれば)クライアントから煙たがれ安い存在です。
一方、税理士はクライアントに寄り添った位置にいるため、クライアントから感謝されやすい存在です。

独立後の働き方の違い
独立後の主な業務は、次のとおりです。
独立後の働き方
- 公認会計士:監査、M&Aコンサル、IPO支援、経営コンサル
- 税理士 :税務相談、税務申告、経営コンサル
公認会計士の場合、監査法人で培った「監査」「IPO支援」のスキル、そして付随して「M&A」のスキルを用いたコンサルに従事することが多いです。
また、小さな会社の経営コンサルを手掛ける若手会計士も多いです。
一方、税理士の場合は、会計事務所や税理士法人での業務と大きく変わることがなく、引き続き「税務相談」「税務申告」を行うことになります。(ただし、クライアントの規模は小さくなり、個人のお客さんが増えます。)
税理士は、前職(会社員)での仕事内容が 独立後もそのまま生きるため、独立する方の割合が非常に多いです。
また、(少し細かい話ですが)仕事の「単価」面でも、公認会計士と税理士とで少し異なります。
仕事の単価の違い
- 公認会計士:単価は高いが、単発の仕事が多い
- 税理士 :単価は安いが、継続的な仕事が多い
公認会計士は、「コンサル」がメインになります。
M&AやIPOのコンサルは、プロジェクトが終了すると契約も終わりますので、「単発」の仕事です。しかし、単価は大きいです。
一方、税理士は、「税務申告」がメインになります。
確定申告は企業・個人ともに毎年するものですから、毎期継続して、契約を締結できるケースがほとんどです。ただし、単価は安いです。
公認会計士の場合、税理士として働くケースが多い
公認会計士の場合、独立後は「単発」の仕事が多くなりますから、生活が安定しなくなるリスクがあります。
しかし、(後述しますが)公認会計士の場合、「税理士」として登録することができます。(逆に、税理士が公認会計士になる事はできません。)
そのため、公認会計士として単発での高額契約をこなしながら、税理士として安定した仕事をこなすという、「良いとこ取り」ができます。
公認会計士と税理士の、「年収」の違い
公認会計士・税理士、それぞれの「年収」は、所属する会社の種類によってやや異なります。(当然といえば当然ですね。)
ここでは、それぞれ「最もオーソドックスな働き口」での年収を比較します。
公認会計士と税理士の、最もオーソドックスな働き口
- 公認会計士:監査法人
- 税理士 :会計事務所
以上を前提とした年収推移は次のとおりです。

一貫して公認会計士の方が年収が多く、年を追うごとに年収の差が開いていますね。
グラフだと数字が見づらいので、年数ごとの年収データを貼り付けておきます。
公認会計士の年収推移
- 1~2年目:年収500万~650万
- 3~4年目:年収650万~750万
- 5~8年目:年収750万~900万
- 9~12年目:年収900万~1100万
- 13~16年目:年収1100万~1200万
税理士の年収推移
- 1~3年目:年収400~500万
- 4~6年目:年収500~650万
- 7~9年目:年収650~750万
- 10~12年目:年収750~800万
- 13~16年目:年収800~900万
ザックリと、公認会計士の方が税理士よりも、200~300万ほど年収が高いとお考えください。(もちろん、あくまで平均です。)
なお、私の公認会計士としての年収は、次の記事でかなり詳細にお話しています。
関連記事:公認会計士の年収はどのくらい?【給料明細をお見せします。】
公認会計士と税理士の、「受験資格」の違い
資格試験には、「受験資格」というものが設定されるのが通常です。
なお「受験資格」とは、その試験を受験するための「条件」のことです。
公認会計士試験に、受験資格は設定されていない。
実は、「公認会計士試験」については受験資格が設定されていません。
つまり、高校生でも中学生でも、誰でも受験できます。
国家資格の中では、かなりレアです。
税理士試験の受験資格
一方で、税理士試験には受験資格が設定されています。
いくつかの要件があり、いずれか1つを満たせば、税理士試験を受験することができます。
受験資格については国税庁HPに詳細が書かれていますが、ちょっと難しいので、表現をシンプルにして書き直しました。
税理士試験の受験資格
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した者
- 日商簿記検定1級合格者
- 全経簿記検定上級合格者
- 会計事務所などで2年以上、確定申告の補助などに従事した方
- 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
- 商工会・青色申告会のおける記帳指導事務に2年以上従事した者
参照:税理士試験受験資格の概要
1つ1つ見ていただくと分かりますが、最もカンタンなのは「日商簿記1級」または「全経簿記上級」に合格することです。
それ以外の要件は、難関試験への合格、または実務経験が必要となります。
たとえば日商簿記1級は、合格までに700時間の勉強が必要です。
簿記2級・3級の知識も必要ですので、知識ゼロからスタートした場合、受験資格を得るまでに1,000時間ほどかかってしまいます。

「今から勉強をスタートしたい」という気持ちが強い方には、公認会計士のほうが(個人的には)オススメです。
勉強意欲は徐々に低下してしまうため、すぐに勉強できたほうが、効率は絶対に良いですからね。
>>クレアールなら、無料で資料請求が可能です。
公認会計士と税理士の、「勉強内容」の違い
ここからは、「公認会計士」と「税理士」どちらを勉強しようかな?と考えている方向けです。
ご自身に合った方を選択されると、合格可能性は上がります。
試験科目は?
公認会計士は「会計」、税理士は「税務」ということで、試験科目が異なります。
公認会計士試験の科目
公認会計士試験は、短答式試験(1次試験)と論文式試験(2次試験)から構成されています。
論文式試験のほうが範囲は広く、試験科目も5科目に増えます。
公認会計士(論文式)試験の科目
- 会計学
- 監査論
- 企業法
- 租税法
- 選択科目(経営学など)
基本的にはすべて100点満点ですが、「会計学」だけは300点満点です。
「会計」の専門職ですので、会計について広く深く勉強することになります。
また、「租税法」という科目は、その名のとおり「税金」に関する諸法規の科目です。
細かく言えば、法人税・所得税・消費税を学習することになります。(厳密には「相続税」も試験範囲ですが、ほとんど出題されず、勉強量も非常に少ないです。)
そのため、「税金を勉強したい!」という方にとっては、公認会計士試験は少し物足りなく感じるでしょう。
その他、公認会計士の勉強内容は、次の記事で詳細解説しています。
税理士試験の試験科目
税理士試験は、次の科目のうち、計5科目をパスすることで合格できます。
税理士試験の科目一覧
- 簿記論(必須科目)
- 財務諸表論(必須科目)
- 法人税法
- 所得税法
- 消費税法
- 酒税法
- 住民税
- 事業税
- 相続税法
- 固定資産税
- 国税徴収法
このように、税理士試験では「税法」について主に学習します。
科目を選ぶ基準としては、税理士になった後「得意分野」にしたい科目を選ぶことになります。

税法と言っても分野は様々ですので、自分でフィールドを選べるのは、メリットの1つと言えるでしょう。
公認会計士と税理士の「勉強方法」の違い
試験科目を見ただけでは、イマイチ「違い」が想像できないと思いますので、ザックリと「勉強方法の違い」を解説します。
とてもザックリとした説明になりますが、
- 公認会計士試験は、「考える」ことが多い試験
- 税理士試験は、「丸暗記」が多い試験
このように捉えていただくと良いでしょう。
公認会計士試験は、比較的「考える」「理解する」という能力が必要になります。
試験科目の名称を改めてみていただくと分かりますが、末尾に「学」や「論」といった名称が付いていますよね。
学者や実務での「考え方」を学習する科目が多いため、税理士試験よりも、考える力が必要とされます。
一方、税理士試験では、「丸暗記」が多く必要になります。
たとえば、日本の消費税率について、なぜ「10%」なのか? その数字に理論的な根拠はありません。
そのため、税理士試験ではこのような「数字」や「計算方法」を丸暗記しなければなりません。

なお、筆者は暗記が苦手だったため、迷わず公認会計士のほうを選択しました。
注意
公認会計士試験においても、一定量の暗記は必須です。
あくまで比較の話であり、文系最高峰資格ですから、基本的には暗記がメインの資格試験になります。
合格率は?
公認会計士試験の合格率は、短答式試験(1次試験)が約10%、論文式試験(2次試験)が約35%、合計すると約8%の合格率で推移しています。
一方で税理士試験の合格率は、(科目・年度によりバラつきがありますが)約10%~20%の間で推移しています。
公認会計士試験の場合、全科目まとめて合格しなければなりません。
一方、税理士試験では、科目ごとに合格することができます。
このように、試験のタイプが異なるため、単純に「合格率」で難易度を比較することはできません。
難易度を知るには、「勉強時間」で判断するのが最もかんたんです。
勉強時間は?
公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は、5,500~6,800時間です。
また、勉強期間は2~3年必要ですので、1日あたり6~8時間勉強すると合格します。
この根拠は、下記の記事でかなり詳細に検証しています。
関連記事:公認会計士合格までの勉強時間は7000時間でした【失敗した話】
一方、税理士試験では「科目を選べる」ので、科目ごとに勉強時間が異なります。
科目によって勉強時間にバラつきがありますが、1科目につき約1,000時間かかります。
合計の勉強時間としては5,000時間で合格できますが、勉強期間は3~5年は必要になります。
勉強期間が長くなる理由など、詳細は次の記事でご説明しています。
このように、「勉強時間」は公認会計士試験のほうが多く必要ですが、「勉強期間」としては税理士試験の方が長くかかります。
どちらが難しいかは判断しがたいですが、たとえば「勉強に専念できる環境」があるのであれば、公認会計士のほうが短期間で合格できるのでお得ですね。
一方、「どうしても働きながら勉強したい」という方には、間違いなく税理士のほうがオススメです。
>>クレアールなら、無料で資料請求が可能です。
独学での合格は可能?
公認会計士と税理士、いずれも独学での合格は、ほぼ不可能です。
ほぼという事で、完全に不可能というわけではないのですが、「独学で合格した」という方に私はほとんど会ったことがありません。
なお、上述した「合格に必要な勉強時間」は、あくまで予備校に通ったケースです。
独学の場合は、(仮に合格できるとして)2~3倍の勉強時間が必要になります。
まとめ
まとめです。
簡潔なまとめ
- 「公認会計士」は会計の専門家、「税理士」は税金の専門家
- 年収は「公認会計士」の方が200~300万円高い
- 勉強時間は「公認会計士」が約6,000時間、「税理士」が約5,000時間
- 勉強期間は「公認会計士」が平均2~3年、「税理士」が平均3~5年
もし「公認会計士と税理士、どっちを目指そうかな…」と検討中の方は、個人的には「公認会計士」のほうをオススメします。
公認会計士資格を取得してしまえば、税理士資格も取得できますからね。
両者の試験制度について、もっと詳しく知りたい方は、予備校のパンフレットを手に入れると良いですよ。
具体的な勉強内容や、実際の勉強スケジュールが分かりますから、リアルな受験生活をイメージできますよ。
>>クレアールなら、無料で資料請求が可能です。